大人のためのブックリスト6(令和5年度発行)

一般成人を対象とした、大森図書館の職員・スタッフがおすすめする本のブックリストです。
テーマは「アートを楽しむ本、集めました」。図書館員お勧めのアートにまつわる本を読んで、様々な芸術に触れた気分を味わってみませんか?

※タイトルまたは巻号をクリックするとその本の詳細画面を見ることができます。

「美しい」ってなんだろう? 美術のすすめ
森村 泰昌/著 100%ORANGE/装画・挿画 理論社 記号:児童704モ
 本書は、現代美術家である著者が中高生向けに書いた美術の入門書です。
様々な角度から有名な絵画とその画家についての紹介と解説がされており、それらを通して「美しい」とは何なのか、著者の作品もからめてわかりやすく書かれているので、大人の美術初心者にもおすすめです。
著者の美術についての記述で印象に残っているのは「見える世界を通じて、見えない世界にいたること」という一文。絵画もそして人も、外側から見える部分だけではなく、その内側を感じよう、知ろうとすることの大切さや面白さ、自由があり、またその感じ方も人それぞれであり、尊重されるべきだということ。
美術のみならず人生においての「美しい」についても学ぶことができる一冊です。
美しい絵本。
ペン編集部/編 阪急コミュニケーションズ 記号:019.5ウ
 最近では絵本=子どものものというのではなく、大人が読んでも感動する、心が癒されるなどの理由で『大人の絵本』というとらえ方が浸透してきました。そんな中で、誰でも手に取れる身近なアート作品として絵本を日常に取り入れてみてはどうでしょう。美術館で名画を鑑賞するのも素敵ですが、絵本ならば手元に置いていつでも楽しむことができます。何度も繰り返し見ることで、以前とは違う気づきがあるかもしれません。そんな絵本選びのガイドとなる1冊ですが、2009年の出版なので今ではもっと沢山の美しい『大人の絵本』が出版されていますね。入門の書として楽しんでもらえればと思います。
岩石・鉱物図鑑
クリス・ペラント/著 ヘレン・ペラント/著 貴治 康夫/監訳 柴山 元彦/監訳 山崎 正浩/訳 創元社 記号:458ペ
 「石」と聞くとどんな色の石を思い浮かべるでしょうか。灰色や茶色など地味で目立たない色を思い浮かべる方もいる事でしょう。そんな方にはぜひこの本を開いていただきたいです。本書には世界中の様々な色、模様をした石が並んでいます。もちろん道ばたで見かけるような灰色の石もたくさんあります。しかしそれらの石もよく見るといくつかの種類の石が交じり合い不思議な模様をしているのが分かります。まさに地球が生み出したアート! この本では美しい石の写真とともに詳しい石の成り立ちを紹介しています。
この本を読んで、あなたもアートな石を探してみてはいかがでしょうか。
東京の歴史的邸宅散歩
鈴木 博之/監修 和田 久士/写真 JTBパブリッシング 記号:521.8ト
 明治維新を経て東京が誕生して150年余り、その間にこの都は大きな変貌を続けています。多くの建築物は大戦、高度経済成長などによって失われていきましたが、まだ歴史的に由緒ある邸宅は数多く残っています。個人の邸宅だった時代には一般の人々が訪れることのできなかったもので、一般公開されたり用途を変えて使い続けられている芸術的建築物もあります。高層ビルに埋もれてしまった東京の起伏を感じながら、町を歩き、邸宅や社寺を巡ってみませんか? きっと時間と空間を越えた小旅行を楽しむことができるでしょう。
お薦めは玉川上水沿いの山本有三記念館、江戸東京たてもの園内の高橋是清邸です。
法隆寺を支えた木
西岡 常一/著 小原 二郎/著 日本放送出版協会 記号:524.2ニ
  日本の木造建築はアートである。代表格が世界遺産に登録された「法隆寺地域の仏教建造物」であり、世界最古の木造建築物である。この仏教建造物は1300年も超え、飛鳥時代の姿を今に伝えている。これを成し得たのは、歴代の宮大工が木の特性を知り尽くしたことによる。例えば、立木を伐採後3~10年かけて成長の際に必要だった樹液を抜きとることで、建物としての木へ生れ変わる。例えば、木には「日面」と「日裏」があり、日裏を南面に用いて日光にあてるとひび割れや風化がひどくなる。本書は、このような木の特性を知り尽くした一子相伝の宮大工の西岡常一氏が語り、農学博士の小原二郎氏が解説した。日本、日本人、日本の伝統を知るためにも、お薦めします。
目の見えない白鳥さんとアートを見にいく
川内 有緒/著 集英社インターナショナル 記号:706.9カ
 ひょんなことから、タイトル通りの、目の見えない白鳥さんとアートを見に行くことになった著者。 アートの見方は、見えているひと同士でも必ずしも一致しないもので、自分の経験や思い出と重ね合わせたりして、それぞれの表現があり、障害の有無は関係ない。見える人が、白鳥さんのような見えない人と一緒に見ることによって、一人で見る時とは異なった感覚で、アート作品に向き合うこととなり、アート作品からさまざまなことを発見し、世界の見え方さえも変わってくる。 アート作品の写真も豊富で、かつ対話形式なので、自分もアート鑑賞の仲間に入れてもらったようで、おもしろい。 アート鑑賞とは何か、障害とは何かを問う、2022年Yahooニュース!本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作品。
怖い絵
中野 京子/著 朝日出版社 記号:723ナ
 心地良い、暖かい、気持ち良い、美しい、綺麗。写真のような精密さ、実在しているような立体感。そんな感性で感じる絵画の鑑賞法が、吹っ飛んでしまう中野京子さんの解説。
兄弟姉妹の子供達4人が、盛装してにこやかに微笑んでいる家族肖像画のどこが怖い絵なのか? 殺人や子殺しなど見るからに「怖い絵」と並んで挿入されているホガースの「グラハム家の子どもたち」。鳥肌が立つほどの怖ろしさを是非、ご堪能ください。作者の生き様、時代背景・習慣と風俗、その知識を縦横に駆使した深い洞察力と筆力。20枚の絵画の簡潔な解説。―背後の暗闇にこそ、真の怖さが潜んでいます―
#名画で学ぶ主婦業 主婦は再びつぶやく
田中 久美子/監修 宝島社 記号:723.3メ
 この本は敷居の高そうな名画について楽しく学ぶ事ができる本です。名画という非日常とツィッター(現X)での主婦のつぶやきという日常が融合することで独特な視点で構成されています。名画とそれに添えられたつぶやきのギャップに、家では日々の家事や育児に追われ、息つく間もなく疲れ果てた主婦達の心にふっと笑いと共感をもたらしてくれます。もちろん、主婦ではない方も楽しめる内容です。又、面白いだけではなく、一つの作品についてのわかりやすい解説もある為、名画を知りたい、学びたいという方にもお薦めできる本です。是非、この本を読んで、ご自身のお気に入りのつぶやきや名画をみつけてみてはいかがでしょうか?
豆皿の本 小さな皿の中に広がる大きな世界
枻出版社 記号:751.1マ
 おうち時間が大切にされるようになってきた昨今、日々の暮らしにアートで彩りを加えてみてはいかがでしょうか。豆皿は三寸あまりの小さな焼物です。この本では、焼き物の基礎知識から、豆皿の食器としての効果的な使い方まで、あらゆる角度から豆皿を紹介しています。お手ごろな価格で、ちょっとしたスペースに置くことができるので、焼き物に興味を持ち始めた初心者にも豆皿はうってつけです。色とりどりの豆皿の写真を眺めているだけでも、ワクワク楽しい気持ちになってきます。小さな器にさまざまなデザインが施され、作り手の思いがぎゅっと凝縮されている、豆皿の魅力に引き込まれること間違いなしの一冊です。
最後の秘境東京藝大 天才たちのカオスな日常
二宮 敦人/著 新潮社 記号:377.2ニ
 あまたの芸術家を輩出してきた国内最高峰の芸術系大学と言えば、多くの人が名を挙げるであろう東京藝術大学。本作では藝大に通う天才達の日常がリアルに描かれています。「毎月の仕送り50万円」「元ホストクラブ店長の美工生が語る日本画の魅力」「卒業生の半数は行方不明」等々、常人の想像を超えるエピソードが軽妙な語り口でつづられており、サクサクと読み進められる一冊です。(個人的にはロックバンドKing Gnuの井口理さんが声楽科の学生としてインタビューに答えていたことに一番ビックリしました。) 音楽と美術、表現の方法は様々なれど、自分のやりたいことに惜しみなく情熱をそそぐ芸術家達の熱い思いを、ぜひ本作から感じとってください! 。
ライオンハート
恩田 陸/著 新潮社 記号:Fオン
 17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ、フロリダ…時と空間を超えて、互いに強く惹かれあい、そしてひと時の逢瀬のあと、再び長い別れの時間がくる、そんなすれ違う男女を描いたラブストーリーです。恩田さんの作品にしては恋愛要素が強く、そして、巧みな文章力によって、出会った時の歓喜、別れの心苦しさが正に自らが体験したかのようにリアルに感じることができます。
この作品は5つの絵画からインスピレーションを受けた5つの短編から構成されているのですが、それぞれの絵画を鑑賞してから作品を読むと、その描写力と絵画と文章との融合性が素晴らしく、文章による力と絵画から受ける力、両方を楽しめる作品になっています。
楽園のカンヴァス
原田 マハ/著 新潮社 記号:Fハラ
 ニューヨーク近代美術館MoMAに勤務したこともある原田マハ、その真骨頂といって良いアートミステリー小説です。
伝説の美術コレクターが所有するアンリ・ルソーの晩年の傑作「夢」に酷似した作品「夢を見た」。果たして真作なのか贋作なのか、ルソーを愛する2人の専門家が鑑定に挑みます。登場人物たちの疑心暗鬼、モデルとなった女性、絵の下に隠されたピカソの大作…など、絵画とルソーの生涯が絡みながら展開していく謎に引き込まれます。
また、主人公が絵に魅了されて行くその様は、「現代アートはよく分からない」そんな人の絵画への扉を少しこじ開けてくれる一冊です。