大人のためのブックリスト8(令和7年度発行)
一般成人を対象とした、大森図書館の職員・スタッフがおすすめする本のブックリストです。 テーマは「動物が愛おしくなる本、集めました」。図書館員お勧めの動物にまつわる本を読んで、癒されたり、感動したりと、動物と触れ合った気分を味わってみませんか?
※タイトルまたは巻号をクリックするとその本の詳細画面を見ることができます。
| 古生物のカルテ 古病理で楽しむ化石の世界 土屋 健/著 技術評論社 記号:457.8ツ |
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| 痛風のティラノサウルス、虫歯に罹ったミクロシオプス(霊長類)、「正常」な異常巻きアンモナイト。この本では様々な病気、あるいは損傷を負った『患者』たちが登場します。 「古生物のカルテ」というタイトルにあるように、化石に見られる異常から生前の疾患、健康状態を研究する古病理学によって明かされた「症状」が詳しい解説とともにまとめられています。 本書に登場する、なんらかの異常を抱えた『患者』たち。化石という記憶を通じて、彼らの生きていた動物としての息づかいを感じてみてはいかがでしょうか。 |
| ダーウィンの思想 人間と動物のあいだ 内井 惣七/著 岩波書店 記号:467.5ウ |
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| 「動物とは何か」を考える場合、人間との比較が生じます。人間は言語使用能力など6つの視点から動物とは異なる特別な存在、と考える向きがあります。これに反駁したのがダーウィンです。ダーウィンは人間を特別視する6つの視点に対して進化論の見地から論駁を試み、人間の身体的特徴や能力、心的能力、そして道徳的能力に至るまで、すべて動物的特徴や能力に起源をもち、連続的につながる、としています。本書は、科学哲学の研究者である著者がダーウィンの進化論を哲学思想でアプローチしたものであり、動物と人間の関係、立ち位置を改めて考えてみる機会を与えてくれます。 |
| 虫とけものと家族たち ダレル/著 池沢 夏樹/訳 集英社 記号:480.4ダ |
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| 動物好きのこどもなら一度は夢見るであろう“自分の動物園を作りたい”という希望をかなえてしまった人、ジェラルド・ダレルはそんな人物です。後年イギリス・ジャージー島に私設動物園を作り動物保護活動に取り組んだり、本書の他にもユーモラスで動物がたくさん登場する本を執筆しています。この本は彼が10歳の時に家族と共にギリシャ・コルフ島に移住した日々を描いた自伝的な物語。イヌ、カメ、カササギなどの動物をはじめたくさんの生きものが登場し、深い観察眼で個性が浮き彫りになりまるで友人のように感じてきます。また家族をはじめギリシャで出会う人々も一癖も二癖もある人物ばかり。豊かな自然と面白おかしい日々は正に抱腹絶倒です。 |
| 動物の心 知性 感情 言葉 社会,見えてきた豊かな心的世界 日経ナショナルジオグラフィック社 記号:481.7ド |
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| あなたは犬や猫が「何を考えているのだろう」とか、遊んでいるときは「楽しい」、食べているときは「美味しい」がわかるのだろうかと考えたことはありますか? 動物が無数の群れの中で自分の子供を認識し、守り、育てるのは単純に本能だけによる行動でしょうか? そんな疑問に対し、科学者により数多くの実験・研究が続けられていて、動物にも知性や知的能力があることはもちろん、喜びや悲しみ、楽しみ、愛情などの感情、コミュニケーションによる社会性もあるという驚くような結果が紹介されいます。そしてなによりこの本は、美しい写真が満載。動物たちの豊かな表情を見ているだけでも心が癒される一冊です。 |
| アフリカではゾウが小さい 野生動物撮影記 岩合 光昭/著 毎日新聞出版 記号:482.4イ |
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| 岩合さんは猫の写真集やテレビ番組で有名ですが、世界的動物写真家です。この本はそんな岩合さんのフォト・エッセイです。 動物たちの表情やしぐさに、アフリカの光や風、匂いがすなおに感じることができます。そんな写真を撮るためにずいぶんと動物に近づいて、そばにいるガイドさんはもちろん、読んでいる私も「そんなに近づいて大丈夫なのか?」と思ってしまいます。自分が乗っている車の下に昼寝しているライオンのしっぽが6本。寝起きに車に頭をぶつけるライオンって…。危険とは分かっているけどそんな状況を実際に見ることができるなんて、ちょっとうらやましい。 岩合さんのやさしい語りが野性動物たちを一層いきいきと感じさせてくれていますが、各所で自然破壊が進んでいたり、絶滅危惧種の動物が増えているのは心配なことです。 |
| 犬の看板探訪記 関東編 太田 靖久/著 小鳥書房 記号:645.6オ |
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| 自分がワンちゃんを飼っているせいもありますが、街を歩いていると犬に関わる看板を結構目にします。街にどんな「犬に関する看板」があるのか? を探訪・記録したのが本作品となります。たかが犬の看板ですが、そのキャラクターデザインがリアル風、アニメ風、デザイン風等々、実に多種多様で興味がそそられます。著者は本書で関東一円を探訪し千葉県も訪れ、我が印西市も紹介されており、より興味が増すと思います。「犬を訪ねて三千里」「人も歩けば犬にあたる」まさにディスカバーワンチャンの書です。たまにはこんな形での散歩・散策も非常に楽しいでしょうね。 |
| 犬部! 北里大学獣医学部 片野 ゆか/著 ポプラ社 記号:645.6カ |
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| 北里大学獣医学部に通う太田は、ある日一匹の放浪犬と出会い、これまでにない命のふれあいの大切さを経験します。そしてそれをきっかけに捨てられた犬や猫を保護し、新しい飼い主を探すサークル「犬部」を立ち上げます。「助けられる命は助けたい」という純粋な思いで動物と向き合い、寄り添う学生たちの姿に胸を打たれます。そして同時に現実の社会問題としての動物保護や殺処分について考えさせられる作品でもあります。2021年には映画化もされており、多くの人々の心を動かしました。ぜひ手に取って学生たちの思いに触れてみてください。 |
| ネコの名は…スペシャルゲスト 岩合 光昭/著 朝日新聞出版 記号:645.7イ |
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| この写真集の色鮮やかな表紙を飾っているのが、タイトルの名前にもなっているネコの「スペシャルゲスト」です。なぜそんな名前が付けられたの? と思いながらページをめくっていくと、とても素敵なエピソードが添えられていました。世界中で撮られた日常の美しい背景とともに映るネコたちの表情からはどれも強い意志が伝わってきます。写真に付けられたネコ語(○○ニャン)のタイトルもなんともユニークで面白いです。裏表紙のボスネコのような「チャンベダ」は、目線の先で小動物たちがビビッて石化していないか思わず心配になりました。 ネコ世界に入り込んでしまった感覚を味わえる、動物写真家・岩合光昭による人気連載の書籍化第2弾です。 |
| まるありがとう 養老 孟司/著 平井 玲子/写真 西日本出版社 記号:645.7ヨ |
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| 本作は養老孟司先生と飼い猫のまるにまつわる思い出話がつづられたエッセイです。生き物は好きだけれど動物たちとあまりべたべたした付き合いを好まないとおっしゃる養老先生。そんな先生にとって、まるは生き物としての自然な感覚を見失いそうになった時の「ものさし」的存在だったそう。 2020年に天寿を全うしたまるのエピソードにからめて、ご自身の死生観などについても語られており、ちょっと難しいお話の行間から、先生のまるに対する愛情がしみじみ伝わってきます。まんまるで貫禄たっぷりのまるの写真も満載で、写真集としても楽しめる一冊です。 |
| 旅猫リポート 有川 浩/著 文藝春秋 記号:Fアリ |
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| 心優しい青年サトルと元野良猫のナナは、ナナの新しい飼い主を探す最後の旅に出ます。サトルの旧友たちを訪ねる旅は、ナナの目線でチャーミングに語られるリポート形式で進んでいきます。一人と一匹の澄んだ瞳に映る行く先々の美しい景色と、そこで出会った人々や動物たちの優しさや温かさが目に浮かぶように生き生きと描かれていきます。きっと共に過ごしてきた時間はお互いの心に残り続け、人と動物が分かち合う時間は短くても、垣根を超えた絆は永遠に続いていくもので、大切な存在への想いを再認識させてくれます。もう二度と会えなくても心の中に生き続ける存在に感謝して、これからも笑顔で過ごしていきたいと思わせてくれる物語です。 |
| 小鳥を愛した容疑者(「警視庁総務部動植物管理係」「警視庁いきもの係」シリーズ) 大倉 崇裕/著 講談社 記号:Fオオ |
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| 警視庁では、逮捕、勾留された事件の容疑者が飼っているペットの世話をする「動植物管理係」を設立することになり、銃撃を受け負傷した元警視庁捜査一課の須藤がその担当をすることに。そしてその相棒として選ばれたのは新米巡査の薄圭子。何よりも動物を愛する薄は、現場に残されたペットの状態から、事件解決となるカギと見つけだす…といった連作短編ミステリーです。 鬼警部補として恐れられ、それでも人情味あふれる須藤と、どこか抜けていて、動物愛が過ぎるためやや行動が非常識ながらも、動物に対する知識と優れた観察眼を持つ薄のコンビの掛け合いはユーモラスで、回を重ねるごとに熟練の夫婦漫才のようになっていきます。それでいてミステリーとしてしっかり楽しめるのでおすすめのシリーズです。 |
| 少年と犬 馳 星周/著 文藝春秋 記号:Fハセ |
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| 震災で会えなくなってしまった大好きな人を追って東北から九州までの距離を5年かけて旅した犬が、様々な境遇の人と過ごすエピソードを綴った連作短編集。一匹の犬が、出逢う人々に寄り添い、信頼や絆、安心、愛情といったあたたかい感情を抱かせて人間の心を救っていきます。物語の中で犬と関わるのは、家族のために犯罪に手を染めた男性や、壊れかけた夫婦、死期の近い老漁師、震災のショックで心を閉ざした少年など…そういった何かしら事情を抱える人々。人間ではなく、言葉を話せない犬という動物だからこそ人の心を開かせ前を向かせられる時もあると痛感しました。犬好きなら勿論、そうでない人も感動の涙なしには読めない一冊です。 |
| ぶたぶた(「ぶたぶた」シリーズ) 矢崎 存美/著 徳間書店 記号:TFヤザ |
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| 名前は山崎ぶたぶた。バレーボールくらいの大きさ、手足の先と大きな耳の内側に濃いピンクの布がはってあり、右耳が少しそっくり返っている。黒いビーズの点目。姿はぶたのぬいぐるみ、なのに中年男性の声で話し、動く、歩く、働いてる! 職業はストーリーによって様々で人事担当部長、店員、タクシー運転手、レストランのシェフなどなど。ぶたぶたと出会った人は一様に驚きますが、関わっていくうちに気持ちがほぐれていきます。 疲れた日はこのファンタジーを読み、本を閉じたら目の前にぶたぶたがいて、一緒に飲んだり食べたりしているのを想像してみてはいかが? なんだか愉快な気分になってきますよ。 シリーズ化されているので、お気に入りをみつけてください。 |
| ハリネズミの願い トーン・テレヘン/著 長山 さき/訳 新潮社 記号:949.3テ |
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| ハリネズミといえば、まあるいフォルムで可愛らしい反面、いざ棘を逆立てると触れることもできない印象があります。これはまさにそんなハリネズミの姿が反映された、私達にも馴染み深いジレンマのお話です。 弱く脆い内面と、それを守りたいと纏う針の鎧。友人を自分の家に招きたいと願いながらも、断られたら、迷惑だったら…と先回りの心配をして一歩が踏み出せないハリネズミ。誰かに必要とされたい、ただお茶を一杯一緒に飲みたいだけなのに、勇気が出せず幻の誰かと自問自答ばかり。 そんな孤独なハリネズミが愛おしく、どうか勇気を出して…と祈りながらページを捲らずにはいられません。彼の願いが叶いますように。 |
